さこの日常日記

書くことは、……一見不可能なことをあえてするもので、その産物は、……書く人のめざし試みたものに即応することも、似ることもないのだが、その代わり、時として、あたためられた冬の窓に出来た氷花のように、きれいで、おもしろく、心を慰めることがある。

勉強会 C.シュミット「政治的なものの概念」 2017/09/03

タイトルにあるように C.シュミット「政治的なものの概念」の勉強会を実施しました。

 

政治的なものの概念

政治的なものの概念

 

 

参加者:3名

開催日時:2017/09/03

開催場所:東京

勉強会形式:参加者は事前に一読した状態で勉強会に参加。内容確認と意味が分からなかった場所や内容を踏まえての感想を都度発表してもらい議論する形式を採用。

※勉強会開催決定から日数がなかったため、全部読んだ状態で参加できたのは私のみ...

 

 

本書は8節からなっており(各節にタイトル無し)、節ごとに区切った形で勉強会を進行したため、節ごとの内容と議論について記録を残します。

 

【1】

(内容)

・国家=国民の特別な状態であり、決定的な場合に決定力を持つ状態

政治的なものという概念が前提の概念

⇒「政治的なものの」を理解しないと誤解して理解することになる。

国家と社会(宗教、文化、教養、経済等)が浸透すると、国家的=政治的という等値の正しさが失われる

⇒国家と社会が同一性である「全体国家」が登場する。

 

(参加者からの発言)

特別な状態であり、決定的な場合に決定力を持つ状態とはどういうことか?

⇒国家間の戦争?

国家と社会(宗教、文化、教養、経済等)が浸透することの具体例

ナチスドイツのような国家?

 

【2】

(内容)

・「政治的なものの」標識=友と敵

※この標識は道徳的、美的、経済的な標識とは独立(直交)したものである。したがって、政治上の敵が道徳的に悪であり、美的に醜悪であり、経済上の競争者である存在とは必ずしも限らない。

 

・敵=他者・異質者

 

(参加者からの発言)

 ・「敵」の定義は見当たるが、「友」とは?

・某SNS発言より引用

『会社に入ってビックリしたのは、競合他社と行う"戦略的パートナーシップ"はただの方便なのではなく、純粋に経済的な意味で「互いのビジネスのために手を組もう」であったことです。政治的な勝つか負けるか・敵と味方の区別なんて、利益追求を旨とする企業体の前ではほとんど無効だったんです。』

 【3】

(内容)

・諸国民は友・敵の対立にしたがって結束し、この対立が現実に存在し、また政治的に存在するすべての国民にとって現実的可能性として与えられている。このことは、2節で述べた「政治的なものの」標識が他の標識と独立したものであることから道理上否定できない。

⇒敵には公的なしか存在しない。(マタイ伝にある「なんじらの敵を愛せ」の語源は私仇であり、政治的な敵を言及していない)

 

・すべての政治的な概念、表象、用語はすべて友・敵結束であるような具体的な状況と結びついている。したがって、国家・共和制・社会 etc.はそれらが具体的に、なにをさし、なにと戦い、何を反発しようとするのか、を知らなくては、理解し難い。

 

・戦争=組織された政治単位の武装闘争であり、敵対のもっとも極端な実現

 

・闘争の可能性が消滅した世界(平和な地球)=友・敵区別の存在しない世界=政治のない世界

 

(参加者からの発言)

 宗教において、公敵と私敵が区別されているのは驚きである。もう少し詳しく知りたい。

 

【4】

(内容)

・宗教、道徳、経済、人種の対立が、実際上、人間を友・敵の両グループに分けるほど強力であると、それらの対立が政治的対立に転化する。

 

・政治的な結束=重大事態を踏まえた、決定的な人間の結束であり、決定的単位

 

・多元的国家理論:思考上の契機を様々な領域から得ているため、自由主義個人主義の枠を脱していない。

 

(参加者からの発言)

 多元的国家理論の部分が非常に分かりにくい。

 

【5】

(内容)

・政治的単位としての国家は、途方もない権限(=交戦権)を一手に集中している。

・戦争は政治的にのみ意義があるものである。(正義の概念と相いれない)

・経済的に機能する利益社会は邪魔者を排除するようなことはしない。邪魔者を抹消しようと本気で要求するのは狂気のさたである。

・一国民が政治的決定を放棄することで、人類の理想とする状態を招来することはありえない。ただ、いくじのない一国民が消えうせるのみに過ぎない。

 

(参加者からの発言)

 

【6】

(内容)

・政治的単位は、敵の現実的可能性を前提とし、同時に共存する他の政治的単位を前提とする(=多元論)

「人類」は戦争をなしえない。「人類」は地球という惑星上に、敵をもたないからである。

・「人類」という名のもとの戦争など政治的利用法をされる場合が、上記より、これは欺こうとする行為である。

・「国際連盟」は諸国間の組織であり、国家の存在を前提とすることから、普遍的組織でもないし、国際的組織でもない。

国際連盟は、戦争の可能性を解消することはできない。

 

(参加者からの発言)

 ・「人類」が戦争するのは地球外生命体との時のみと考えられる?

 

【7】

(内容)

・真の政治理論=人間を善悪でみるのではなく、危険なかつ動的な存在として考える。

※極めて現実主義であるため、人々は不安や驚愕を覚える。

 

・政治的終末の特徴=友・敵の区別をなしえず、ないしはしたがらない。

 

(参加者からの発言)

 本節前半部~中盤部は政治学の知識がないためか、理解し難い。

 

【8】

(内容)

 ・個人主義自由主義は、政治的なものへの否定が含まれているため、国家理論や政治理論にはいきつかない。

 

自由主義的思考は、国家および政治に対して、「暴力」であるという非難を突きつける。

 

・戦争と暴力=野蛮な衝動

・生活の資料の平和的な話し合いによる獲得=文明的な打算

⇒戦争は、こんにちにおいては利点も魅力も失われており、文明的な打算が主となっている。

 

(参加者からの発言)

今日行われている経済制裁などは敵を前提としている以上、戦争と本質は変わりえない。

 

【所感】

 大学院以来であろう頭をしばく本に取り組んだことで、予想以上に参加者は疲労困憊でした。本ブログに詳細は記載していませんが、私が想像もしていない視点からの理解を得れたので勉強会は継続していきたいです。

 気になる点としては、社会人になったためにビジネス的な観点で理解する傾向があるように感じています。勉強会をする以上は現実に活かしていくことが肝要ですが、ビジネス的な側面が強すぎるの違和感を個人的には感じています。他の参加者はどうだったんでしょうか?